(1)雇い止めが無効になるかどうかの基準
会社が行った「次回は契約の更新をしない」との通知は、期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)の雇い止めの通知に当たります。
期間の定めのある雇用契約は、原則として期間の満了によって終了しますが、雇い止めの対象となった従業員が、期間1年の契約を数回更新しており、「期間の定めのない契約と実質的に異ならない」あるいは「有期雇用契約であっても、契約更新に対する合理的期待がある場合」と裁判所に判断され、「解雇権濫用法理」の適用がされることがあります。
例えば、従業員の業務内容が正社員とほぼ同様であり、会社と従業員の間で特別な手続を行わず、新たな契約書も作成しないまま、契約を3回程度更新しており、同様の地位にある従業員で、これまでに雇い止めの対象となった従業員がいない場合などは、「解雇権濫用法理」の適用があると解されます。
(2)「雇い止めの無効」を主張されてしまった場合の対応
会社は、会社側の立場(雇い止めによる終了)を明らかにして、「雇い止め後の賃金は支払わない」との立場で、交渉を行う必要があります。
ただし、裁判外の交渉を前提として、合意退職の形をとって、数か月分の賃金を支払って解決する場合もあります。
では、合意が成立せず、元従業員が労働審判を申し立てた場合は、どうすればよいでしょうか。
労働審判は、「申立書」及び「答弁書」から一応の心証が形成され,第1回期日で労働審判官【裁判官】の心証が形成され,その心証に基づいて調停案が提示され,調停が成立しない場合(原則として3回以内が
目安となります)は労働審判が出されると言う手続です。
労働審判の結果に対し、期間内に異議が申し立てられた場合、通常訴訟へ移行します。
労働審判手続は、手続の迅速性(労働審判の手続で終了する場合は、3~4か月程度で解決する)を最大の特色としており、通常は第1回期日で心証が形成されます。
通常の訴訟と異なり、話し合い(調停)による手続を前提としますが、労働審判官の調停案は、第1回期日までの主張と立証による心証を前提としています。
労働審判申し立てのほとんどは労働者側が行いますが、会社は、裁判所から書類(申立書等)が送付されてきた場合には、必要な反論(答弁書)を期限までに作成し、第1回期日において、十分な事情を説明する必要があります。
また、上記のように、裁判所から提示される内容を予測したうえで、どの程度の調停案であれば、合意ができるのか、についても、事前に準備しておく必要があります。
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